法務エレベータピッチ「技術革新は人を幸せにすると思う?」と不意に聞かれたらどうするか

*このコーナー(投稿)は、将来、論文・プレゼンテーション・会議・報告書・国内外の上司・同僚との会話に利用できそうな有意義な定義・データ・リンクを短くまとめたものです*



あなた「先日、海外から来た役員とチームディナーに行った際に『技術革新は人を幸せにすると思う?』という質問があった。

テーブルの多国籍の同僚からいろんな意見が出てきて面白かったのだけど、自分は何も言えなかった。

『技術革新は人を幸せにすると思う?』という質問に一応答えられるようなパースペクティブを整理してみたいな。」

「民主政・技術革新、心の空隙を生む」大阪大学名誉教授 猪木徳武先生

2019年1月4日の日経の「経済教室」の記事を何度か読み返しています。猪木先生の問題提起が、皆様の引き出しをきっと広げてくれると思います。

なお、個人的な経験のご紹介ですが、外国人の同僚とのディナーは、「ゲスト」である私達日本人が空気を読まずに、テーブル全体に質問を投げかけるチャンスでもあります。普段、そのめんばーで出てこない質問をあえてそっと差し入れることで、同僚の間で違った考えを引き出すチャンスでもあります。

(日本人同士でランチに行っていて、その場で、「技術革新は人を幸せにすると思う?」という話題は出ないですよね。)

猪木先生「人口、GDP、消費者物価の3つのマクロ指標のいずれを見ても、この15年間の日本の特異なパフォーマンスを示してきた。この動きが既存の理論では説明できない」

まず世界相場から見た平成の後半部分の日本経済の特異性を、人口、国内総生産(GDP)、消費者物価の3面から見ておこう(表参照)。

(1) 国際通貨基金(IMF)によると、ほとんどの国で人口は増えているが、増加率はおしなべて低下している。しかし主要国の総人口の増減を02年から17年の変化率で見ると、減少(マイナス)を記録している国は日本のほかには数えるほどしか見当たらない

(2) 日本のマクロ経済のもう一つの特徴は、02~17年の15年間で、実質GDPが15%しか成長していないという点だ。ギリシャとイタリアを除くと、この日本の数字は主要国の中では際立って低い。

(3) 同じことは消費者物価指数についても言える。概して実質GDPが高い伸び率を示した国は、消費者物価の上昇率も高かった。成長過程においてインフレ圧力が強かったインドネシア、ベトナム、インドはその代表例だろう。この消費者物価についても日本は特異な位置にある。02年から17年の15年間でわずか3%の上昇を見たにすぎないのだ。

人口、GDP、消費者物価の3つのマクロ指標のいずれを見ても、この15年間の日本は特異なパフォーマンスを示してきた。この動きが既存の理論では説明できない以上、歴史的な視点からも日本経済の現状を把握する必要がある。

平成の終わりに(1) 「知性の断片化」の危機回避を 猪木武徳 大阪大学名誉教授
2019/1/4付日本経済新聞 朝刊
同上

猪木先生「民主政治と技術革新は社会の連携弱める」

猪木先生は、理論での説明をいったん棚上げした上で、下記のように、日本のデモクラシーと急速な技術革新に原因があるのではと示唆します。

18世紀の後半から西欧で急速な展開を見せた工業化は、以後2つの現象を相伴いつつ進行してきた。一つはデモクラシー(議会制民主政治)の浸透、もう一つは急速な技術革新である。

実はこの2つは、いくつかの点で共通する力を持っていた。

①それ自体はプラスにもマイナスにもなりうる中立的性格を持ち、誰がそれをどう使うかによって、その価値は決まる

②多数が好むものを最終的に選び取る。(略)

③人々をバラバラにして社会の連携を弱めるという性格がある。

同上

では、日本の何が問題で、どうすればよいのか?

猪木先生のご示唆

その上で、猪木先生は、欧米と異なり、概念を輸入した日本にとって、地方自治が重要な役割を担わねばならないが、日本では地域社会という身近なところから、自分たちで物事を決めていくという精神は十分成熟していない、と疑問を呈します。

さらに、日本人が未だに抱いている「時代がその前の時代より進歩しているという19世紀的な進歩史観の呪縛から、われわれは自由にならなければならない」として、断片から視野を広げ、「全体の絵柄」を観ることが重要であると説きます。

技術革新が人を幸せにするか?という問に対して、「個別の分野での革新と進歩が全体としての人類の進歩を必ずしも意味するわけではない」というのが猪木先生の答えのようです。

補足

私も明瞭な答えをまだもちあわせておりませんが、アウトプットを続ける中で何かと何かがつながりそうな気がしています。

海外の同僚と議論して示唆を得られましたら、更新してお伝え致します。

深掘り資料

平成の終わりに(1) 「知性の断片化」の危機回避を 猪木武徳 大阪大学名誉教授
2019/1/4付日本経済新聞 朝刊


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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