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法務エレベーターピッチ「2019年日本の経済界のトップアジェンダ」

*このコーナー(投稿)は、将来、論文・プレゼンテーション・会議・報告書・国内外の上司・同僚との会話に利用できそうな有意義な定義・データ・リンクを短くまとめたものです*



本社女性役員「2019年の日本の経済界のトップアジェンダは何?」

あなた「一般社団法人日本経済団体連合会(経団連:Japan Business Federation)の中西会長は、年初の経済誌のインタビューにおいて、①日本のエネルギー問題(コストが高い)[energy cost issue]、②消費税10%への増税による財政問題の解決 [consumption tax hike]、③米中の技術覇権の争い [China–United States trade war]、④人口減少を乗り越えるためのデジタル時代にあった構造改革 [depopulation]、を挙げています。」

あなた「中西会長は、『技術覇権の問題は関税の引き上げとは違った類の争いだ。特にファーウェイまわりは、関連する企業への波及が出てくる。グローバル経済のブロック化が生じる。過去に米国はこういう手を何度も打った。日本経済の強みをどういう形でどう発揮するのか、高らかに宣言してやらないと変なことになる』との見解を示しています。」

あなた「また、公益社団法人経済同友会(同友会:Japan Association of Corporate Executives)の小林喜光代表幹事は、既得権 [vested interests] 基盤の古い経済脱却を訴えています。

小林代表幹事は『日本の国内総生産は世界3位だが、米国と4倍、中国とは2倍の差だ。ビジネス環境や労働生産性も世界の中で非常に劣位だという認識がない。国民に危機感を情勢すべきだ。』と危機感をあらわにしています。

2019/1/1付 日本経済新聞 朝刊

深掘り資料:

  1. [法務部門の自学キャッチアップ] Computational Thinking (MIT Press Essential Knowledge series) [2019/4 発売予定]
  2. 経団連「Society 5.0 for SDGsの実現に向けて ―新年メッセージ―」
    1. 中核となるコンセプト「Society 5.0」とは、人類社会において、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く第5段階の新たな社会「創造社会」であり、デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって社会の課題を解決し、価値を創造する社会である。雇用の喪失やデータの囲い込みによる格差の拡大、プライバシーのない監視社会の到来など、デジタル化による暗い未来を予想し、これを懸念する声もある。しかし、IoTやAIの活用により、人が単純作業から解放される時代だからこそ、人が人ならではの創造性を発揮し、最先端技術を使って新しい未来社会を創造していくことが可能になると信じる。 (略)
    2. 今年は、①「Society 5.0 for SDGs」を中心とする成長戦略の強化に加え、②社会保障制度の持続可能性確保や財政健全化など構造改革の推進、③自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向けた経済外交の展開活動の3本柱に据えて、この不確実な時代を乗り越え、新しい時代を果敢に切り拓いていく。
  3. 経済同友会「過去の延長線上から脱する1年に」
    1. 世界情勢をよそに日本はあまりに危機感が欠如している。
      1. 昨年6月の内閣府「国民生活に関する世論調査」によれば、国民の74.7%が現在の生活に満足している。 (略)
      2. 豊かさに関しては、OECD加盟諸国の中で1人当たりGDPは17位(2017年)、その源泉になる就業者1人当たり労働生産性は21位(2016年)まで低下している。
      3. さらに、2013年に『日本再興戦略-Japan is Back-』で「2020年までに先進国で3位以内を目指す」としたビジネス環境は、世界銀行のDoing Businessで当初の13位から2017年の26位まで下げ続け2019年は25位(OECD加盟国36ヶ国:2018年11月時点)に留まっている
      4. (略)これらは過去の延長線上にある財政破綻への道と言わざるを得ない。
    2. 経済同友会は2016年度から計6回にわたり代表幹事ミッションを派遣した。
      1. 特にイノベーションに関して、スタートアップ・ネイションと言われているイスラエルでは、“0を1にする創造力”、“Chutzpah(フツパー)”に代表される精神やビジネスで成功するための「大胆さ・ずぶとさ」若くガッツある国の源にある教育を強く感じた。
      2. 米国では、これまでにない新しいビジネスモデルや社会をAIによるビッグデータ解析を用いてデザインするコンピュテーショナル・デザイン・シンキング管理者注釈]について「これを実践している日本企業は皆無」、「日本は3周遅れ」との厳しい指摘を受けた。
      3. 中国では、2年半前に「法規制の壁は常に立ちはだかっている。しかし、前へ前へと進む勇敢さがなければ生き残れない」と言ってはばからない起業家たちから刺激を受けた。また、2回目となる先月の訪中では、今世紀になって急成長した電気自動車市場、社会に浸透するキャッシュレス経済で“1を100にも10000にもする爆発的展開力”、さらには世界をリードする通信インフラ技術5Gなどをこの目で再確認した。(略)
    3. 今年を過去の延長線上から脱する1年としたい。以下では、社会のステークホルダーの理解と参画の下で脱すべき4つの課題について述べる。
      1. (1)若者に日本の未来を語りかけ、短期的思考の政治から脱する
      2. (2)デジタル化で紙文化・押印文化や割拠主義の行政から脱する
      3. (3)再びブロック経済化・新たな冷戦化するリスクから脱する
      4. (4)経営者の心の内なる岩盤を打ち破り、低収益性の経営から脱する

(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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