「見送られ候補者に留まるか、強い候補者になるか」― 弁護士の組織内弁護士(インハウス弁護士)への転職

事業会社(in-house lawyer)への転職活動

2022年も残り57日。コロナも落ち着き、転職活動を再開した法律家・法務部門の方もいらっしゃると思います。大切な同世代の友人・後輩達に向けて、インハウス10年+のささやかな経験談をまとめました。

どなたかの「あの憧れの会社に入りたい」に役立てばです。なお、この手のエントリは、執筆者の主観・経験による盲点・バイアスもあるため、読み物程度に楽しんでいただければです。

見送られ候補者

・「弁護士資格を売りにくる」

・「なぜ競合ではなくこの会社か、の説明に窮する」(実話)

強い候補者

・一貫して「①なぜ御社か、②事業の基礎的理解・関心の高さ、③なぜ競合ではなく御社か、④入社後どう学び・貢献ができるか、⑤(法律事務所と異なる)事業部や法務部内でのチームワーク/協調性」をプレゼンテーションできる。

補論

(1) 人材紹介会社の見分け方(私見)

一発で見極める方法は、ヘッドハンターが応募を進めている法務部の「法務部長の名前、部員の人数、部の雰囲気」を質問することです。

即時または調査して、皆様にきちんと回答できなかったら、他の方を選んだ方が良いと思います。

何も調べていない or 調べるネットワークがない、すなわち、単に求人票をみて紹介しているだけの場合が多いからです。

採用を数多の候補者から勝ち取りたいのであれば、調査能力(質問時には回答できなくても人事部を通じて情報を入手できる人的能力・ネットワーク)が低いヘッドハンターは組んだ時点で敗戦濃厚となるときもあります。

なお、これは組織構造上やむを得ないことですが、大手人材紹介会社は、求人表取得部隊(営業係)とカウンセリング部隊(お客様の転職相談おうかがい係)が別れています。カウンセリング部隊は、法務部について(営業部隊がいれたデータベースを超えて)何の情報も持っていません。また、質問しても期限までに回答できないことが多い印象です。カウンセリング部隊は、応募先の人事部門と直接のつながりがなく、紹介会社社内のデータベースを見ているだけなので、良いポジションの競争の場合、ライバルが法務部門の情報を彼/彼女のヘッドハンターから入手できているのに、自分は情報をもっていないという競争劣位に置かれる場合があります。なぜヘッドハンターの情報が重要かについては、下記(2)をご覧ください。

(2) 調査方法のご提案

上記の「強い候補者」であげた要素①〜⑤はアドリブでは厳しいと感じます。

実は、面接前の調査量で合否が決まっていると個人的に思っています。

会社のウェブ/IR資料、及び、商品・サービスを購入/体験、は当たり前ですが、私は、ソフト面の情報ソースとして以下を重視しています。

(a)外資ならLinkedIn; (b)ヘッドハンター(面接予定者の名前は事前に必ず入手:当該情報を面接前にもたらせない人材紹介会社と協働してはきつい); (c)インハウス弁護士の先輩・友人; (d)法務部役職者の講演・執筆・記事(if any);

上記を駆使して、対象の法務部門が重んじる価値観を把握しましょう。また、可能なら次回面接者のProfile・経歴・嗜好まで分析しておくことが大事です。

法務部門に限らず、当該事業会社の転職面接に合格したネットの体験談やエントリの情報も補足情報として役立つ場合がございます。

(3) さらに頭一つ抜けたい人のための情報収集・分析のご提案

外資の場合、LinkedInを見れば、面接者の(a)経歴(経歴の重なりがないか探そう:学歴・職歴特に出身法律事務所)、(b)友人知人とのつながり(元Google、元5大/外資系法律事務所など身近な友人が面接者と元同僚ということはよくある)、(c)その方のご興味(ハーバード・ビジネス・レビュー、野球チーム 例えば ヤクルトスワローズ をFollowしているなどの情報)などのパーソナルプロファイルがわかるときがあります。

LinkedInにある面接官の情報は熟読し、ノートに時系列でその方のキャリアを書き出し、いつ何をしていたのかは頭に叩き込みます。むしろ、叩き込まないで面接官とお会いして、その方が仕事人としてどのような過去をお持ちで、そこから推察されるどのような価値感をお持ちかわからずにお話して、あに、1席を巡って殺到している他の自分よりもはるかに優秀な人材に勝てるでしょうか、いや勝てない(反語:なお、私の考え方は、バイアスがあると思うのですが、常に星の数ほど自分より優秀な方が競合していて、自分はどうやったら小さなチャンスを劣位から最大化できるだろうというものです。可能性を見出すために他の方がやらないことまでしっかりと手を尽くして準備することが特徴です)。

なお、面接では「LinkedIn熟読しました」と言うと普通に気持ち悪いと思われる可能性があることには留意しましょう。知らない人に「Facebookすみからすみまでよみました」と言われるとちょっと怖いですよね。

ですので、共通の価値観は、自らの説明や、相手への質問の際にうかがうくらいの大変控えめくらいがよろしいかと思います。また、砕けた雰囲気・共通の話題の際に、面接官が興味が重なるテーマを自分から話すと良いかもしれません(ヤクルトが好きな話をしても良いかもしれません)。

なお、FB/LinkedInで表示される「共通の知人」が必ずしも良好な友人かは不明なので、共通の友人アピールをするなら面接前に裏取りをするか、軽く触れるにとどまりましょう。

面接での姿勢

多様な考えや方法論があると思いますが、私が皆様にお伝えできるのは「資格の売り込み」だけは本当に止めたほうがいいですよということです。

弁護士資格は、書類審査が通った次点で、消尽していると考えたほうが安全です。

大切なことは、繰り返しの当たり前のことですが、「なぜその会社でなければだめか」だと私は考えています。ですので、仮に将来面接を受けることがあれば、面接官を1人の人間・仕事人として尊敬して、尊敬に基づいて、深い深い人的興味をどこまで事前及び会話中に膨らませて持てるかが大切だと私は考えています。なぜなら、非常にお忙しい方が、貴方のために30分もお時間を割いてくれているのです。普段お会いできない方から学び、ビジョンを交換し、仮に批判めいたことを言われても貴方の人格を批判しているのではなく客観的に足りない情報や不備を教えてくれているのかもしれません。機嫌が悪そうでも、それは貴方のせいではなく、もしかしたら、面接3時間前に勃発した行政調査のせいかもしれません。

相手へ感謝をわすれず、自分が知らない事情もあることを考えつつ、30分を特別な有意義なお時間とおもっていただけるよう、心を砕きましょう。具体的には:

(1) 入社したい会社で現に働く面接官のお時間をいただけたことへの感謝

(2) 上記綿密な調査情報をもとにその方のキャリアや経験に深い興味と関心を払う

この2つを意識すれば、数多いる候補者の中で、自ずと上位数%になると思うのです。

「◎◎さん(面接官)とお話して、これ自体が面接とは別に、私の仕事人としての人生に影響を与えてくれるお時間になりました。ありがとうございます。」

と心のなかで思えるか、私はそう思えるような準備をして面接にのぞみたいです。

なお、これは私は毎回そのような気持ちで臨んでおりましたが、今書いていて、pretend(装う)ものではないことは念の為お知らせしたいです。

応募時点で、そこまでの気持ちが持てるかにかかっており、持てないのであれば、入っても真に幸せになるかはわからないですし、そこまで想い入れがもてなかった面接は、やはり思うような結果でないこともございました。

他方、掴み取ってはじめて価値がわかるポジションもあります。

まずは、選択権を得るために、ベストを尽くし、後で悩めば良いと考えております。上記の個人的な経験や考えが少しでもお役に立てば嬉しいです。

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(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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