1-10年目の組織内弁護士の 年収面のアップサイド戦略を少し考えてみる(第1回)

1. 本稿のゴール(第1回・第2回)

読者は、本稿を読了することにより、弁護士1〜10年目の組織内弁護士の年収面のアップサイドをどう確保していくかという2つの試みを把握することができる。

冒頭に結論を示せば、第1に、外資系や日本企業の中でも法務の存在・価値に深い理解があり、かつ、「ジョブ型」として法務メンバーの雇用を試みる企業を目指すこと(連載第1回)、第2に、Equityすなわち株式(潜在株式を含む)を付与する企業を目指すこと(連載第2回)、の2つの視点が大切な気がしている。

他方で、多くのキャリア論の例にもれず、本稿には筆者自身の限られた経験や知識に基づく盲点やアンコンシャス・バイアスが含まれている。したがって、この2つの試みがあらゆる方のあらゆる挑戦や悩みに適合することは難しいかもしれない。

しかし、である。これを執筆している私の心は、素晴らしいポテンシャルを秘めた若手のスター候補の方々が、仮にいま未来を描ききれずにいるのであれば、そのポテンシャルが現在よりも少しは正当に評価される可能性がある道を頭のどこかに置いておいていただけたら嬉しいという願いに尽きる。

インハウスのキャリアは、明確なロールモデルが未だ手探りの段階であり、修習期によっても差異があるように感じられる。本稿は、60期後半〜70期の若手の先生が、これからキャリアの梯子を探していく中で数ある中の1つの地図として参照していただければ嬉しい。

2. インハウス弁護士の経験年数による年収推移

(1) インハウスの年収への高い関心

筆者は、JILAの公式ウェブサイトのオンラインジャーナルの編集長を務めており、日々、会員の興味関心がありそうなトピックや執筆者を探している。

2020年度、JILAの公式ウェブサイトで12月まで首位を独走していた記事は、まさに、年収について取り上げたものだ。コンサルタントに依頼し、JILAの持つデータを分析してもらい、インハウスの年収について多様な視点から分析を依頼した。記事は「欧州在住戦略コンサルタントが分析した組織内弁護士データ:年収法則など」をご高覧いただきたい。

(2) 716万円(5年目?)→960万円(10年目?)→1250万円(15年目?)

https://jila.jp/2020/04/1104/2/

5−10年目の弁護士が組織内弁護士として勤務する場合、平均年収は960万円と示されている。実感としても違和感は少ない。5−10年目で1,000万円の大台を超えてくるかは、おおよそ、その企業の執行役員・本部長・部長クラスの年収帯を横目に見ればおおよそみえてくる。例えば、日系企業の場合、東証上場企業であっても、1,000万円を超えてくるとシニアのマネジャーや、法務部長でも1,200万円前後というアッパーリミットがあるなどが横をみたらだいたいわかる。

原則的に、法務部が他部門より高年収ということは、年功序列でカチッと賃金等級が決まった日本企業では多く見られない。

例外的に、高度な職能を評価し、弁護士資格を持つ者を業務委託として賃金体系から「外すための」アレンジをしている場合、弁護士に特別な給与体系が敷かれている場合(これはおそらく先人が成し遂げたもので当たり前でなく深謝が必要と思われる)などが指摘できるが、全体的に、私自身はあまり多く聞いたことがない。

3. 西田章『新・弁護士の就職と転職』のインハウスのキャリア分析

(1) 西田分析

西田章先生は、21年1月に発売される新刊『新・弁護士の就職と転職』の第8章において『企業の法務部門の長へのキャリアパス』という章を設け、「大規模法務部の部門長」(第22講)、「外資系企業(日本法人)のジェネラルカウンセル」(第23講)、「中小規模法務部の部門長」(第24講)の3つに会社の規模毎にキャリアの長所短所及び競争について詳細な分析を加えている。

インハウス弁護士としてキャリアを積んでいくことを考えた場合、どのステージの会社でどのように将来に向けて自分の強みを育てていくかは上記のような企業毎に異なるため、私は西田先生の新書の購入・検討をまず謹んで強くおすすめしたい。

(2) 渡部分析

私は西田先生の分析に100%賛成であるが、年収というシンプルな視点からは、もう少し別の見方をしている。

それは冒頭で述べた通り、1つの分水嶺が「ジョブ型採用をしている会社か、もっと単純に言えば、外資か否か」が1つのキャリア・年収の差を分けている気がしている。理由はシンプルで「希少」な人材には高い給与が支払われるからだ。希少か否かは、真実希少か否かではなく、募集要件(JD)を満たして、実際に応募できる弁護士の数で決まる。

もちろん、外資と言っても、完全に日本企業のように日本の雇用慣行とマッチして、形式的には外資だがほぼドメスティックという会社も多々存在しますが、私が念頭に置いているのは、人事制度も、USや欧州の枠組みを同じ用に適用している「外資」を念頭に置いている。

4. なぜ外資(又はジョブ型企業か?)

(1) 希少性と年収

結論から言えば、あくまでも私の経験だが、「外資」(ジョブ型でどういう職務をどういう言語でこなすことが期待されているかが明確)というだけで、コンペティターがごそっと減る結果、希少性が高まり、結果、高い報酬による人材獲得が企業側に必要となるからである。

例えば、イメージしてみたい。

検索サーチで、「弁護士、1−5年目」と入れて検索すると、あなたや昔の私を含めてズラーと候補者プールが出てくる。

しかし、そこに一語「+英語」を加えると、100人のプールが、10人、下手すると5人に減ってしまうようなイメージでいる(まだ留学組も帰ってきていない)。

(2)外資怖い (…わかる)

私が最初のキャリアを海外在住も海外留学経験もないバックグラウンドで外資系法律事務所に入ったことは後から考えるととてつもなくプラスだった。「外資」って英語力に自信がないと勝手にハードルを高くしすぎて正直怖いからです。知らない世界であれば誰でも怖いものである。

私も、(元)ゴールドマンサックス!マッキンゼー!グーグル!などと会った途端に名乗られると、ハロー効果の影響もあり「この御仁、す、すごそう!!」と思うのですが、よく考えると、自分もなんとか外資で5年間曲がりなりにも仕事を続けられており、死ぬほど違う環境ではないのだろうな、と思えるようになった。

しかし、やはり、国内法律事務所で働き、国内企業に転職し、その後、外資系企業に移るとなると「不安」だったり、ありもしない、「高い壁」を自分の中で妄想していた気がする。

(3)それでも法律英語勉強への投資のレバが効くと思う理由

では何が言いたいかというと、希少性を起点とした年収面でより大きなチャンスを掴みたいのであれば、「◎◎法を勉強しておいたほうがよいですか?」とかではなく、私は、シンプルに「英語を勉強する」がレバレッジの効いた努力だと最近確信するようになりました。

私が『法律英単語2100』( https://houtan.info )を上程した隠れた理由の1つは、今の待遇やキャリアに悩んでいるスター候補の皆様には、ぜひ英語を鍛錬して、より大きなチャンスを掴み取る確率を上げてほしいとの願いもあるからだ。そんなときに、第1歩を自分のペースで踏み出せる本がない(=なぜか英文契約書の本を買って読み始めてしまう…)ため、将来のキャリア強化のためにも英語を勉強して欲しいと後輩たちにはいつもこっそりアドバイスをする理由だ。

(4) 小括

何か客観的な統計をとったわけではないので、あくまでもヘッドハンターの流す求人情報の定点観測や自身の見聞に基づくが、(日本企業として全国的に見ても高いサラリーが評判の企業を除いて)日本企業と外資企業では、給与の平均値が、1−5年目の方が10年目を見たときに、1.3〜2倍以上の差が生じてくるような感覚があります。

私はIT業界なので、IT業界でのインハウス弁護士の年収を見れば、やはり、終身雇用制度を前提にした給与体系の場合、付加価値が高い特殊な専門職についてもアッパーはやはり他部署の同じクラスの役職にしばられるものなので、ジュニア・ミドルの法務部員 > 執行役員・管理部門長は起こり得ないと感じている。

だからこそ、リミッターがより上方にセットされている外資を、転職先として最初から排除するようなことは論理的にはベストとは言えないと考えている。だからこそ、法律英語の勉強が実は地味だが最大のキャリア投資になると思っている。

次回は、Equityについて少し新しい視点をご提供できたらと思う。

いつもどおり、自分が5年前、10年前に知っていたらその後の行動に良いポジティブな影響や支えをもらえただろうなという内容を共有してまいります。他方で、冒頭に書いた通り、狭い知見での個人的な見解なので、盲点や誤解があると思います。この点は、どうぞご容赦ください。

(最後に宣伝となりおそれいりますが、21年1月に『法律英単語2100』( https://houtan.info )が刊行されます、もしストーリーやニーズにあうようでしたらぜひお手にとっていただければ喜びますし、また将来必要なときに思い出してくれたら嬉しいです。 渡部)


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

次回アクセス時は「若手組織内弁護士」でどうぞご検索ください

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