リーガルリスクの新・国際規格 ISO31022の展望

ISO31022の公式サイトは https://www.iso.org/standard/69295.html である。

1. 日本経済新聞 誌面初のISO31022言及

日立製作所様、日本CLO協会様、結城 大輔 (Daisuke Yuki) 先生とともに、日本組織内弁護士協会 – JILA での取組み(20年5月発行のリーガルリスクの新・国際規格ISO31022)が日経法務面で取り上げられました。

企業が直面する様々な法的リスクを管理する標準規格づくりが進んでいる。従来は経験に頼りがちだったが、世界的に環境問題などコンプライアンスへの関心が高まるなか、罰金も高額化しており、企業にとって致命傷になりかねないためだ。(略)

国際標準化機構(ISO)は5月、法的リスク管理についての標準規格「ISO31022」を発行した。企業が法令や規制の順守に加え、知的財産の保護、海外での訴訟などに対応する組織体制の構築を定めたガイドラインとなる。

法務を担う社内弁護士でつくる日本組織内弁護士協会(JILA)と日本規格協会が中心となって、ISO31022の日本語版を秋にも公開する予定。8月には企業向け説明会を開くという。

JILAの部会で規格づくりに携わる渡部友一郎弁護士は「リスク管理そのものの研究は進んでいるが、法的リスクに絞った研究は世界的にも少ない」と話す。渡部弁護士は民泊仲介大手、米エアビーアンドビーのシニア・リーガル・カウンセルを務めており、同社で使っている法的リスクの評価手法も公開していくという。

ISO31022はリスク管理全体の標準規格である「31000」の派生版にあたる。31000の研修は年数回開いており、毎回80社以上が参加。こうした規格は個別企業が認証を取得する仕組みにはなっておらず、各社が参考にして体制構築に取り組む。日本規格協会社会システム系規格チームの岡本裕氏は「法務担当者の経験や知恵に頼るのではなく、体制そのものを見直すことで企業は強くなる」と話す。

高まる企業の法的リスク 規格策定進む 日本経済新聞

2. 2020年1月からの動き

ISO31022の発行の動きを知り、以下の3つの活動を行ってきました。

(1) 日本組織内弁護士協会(JILA)でのリーガルリスクマネジメントガイドライン研究会の立ち上げ

ISO31022に関する国内での研究は未着手の状態にあったため、研究会を座長として立ち上げました。私が尊敬する組織内弁護士のリーディングロイヤー、外部弁護士、そして何事もシェアできる幹事研究員の方2名とともに、現在、議論を続けており、会員の皆様への研究成果の還元を目指しております。

リーガルリスクマネジメント(LRM)について、国際的に標準化されたフレームワークは確立していない。しかし、現在、ISO31022:リーガルリスクマネジメントの検討が進んでいる。当研究会は、リーガルリスクマネジメントガイドラインである「ISO31022」を先行かつ主体的に研究することにより、もって、法務機能強化の実装を探求する当会会員に対して、研究成果を共有し貢献することを目的としている。単一の法律事務所・企業・個人間において「リーガルリスク」のマネジメント手法は断片化された状態で偏在しているが、当研究会は、これを統合し、一段階進歩させた洗練された「プラクティス」の提唱を目指すものである。立ち上げにあたりオブザーバーとして、著名な組織内弁護士、外部弁護士、東京大学大学院の学識経験者が参加しております。

日本組織内弁護士協会プレスリリース リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会の活動予定

(2) 日本規格協会様への弁護士やリーガルワークを行う側からのISO31022の国内ニーズをインプットし連携

また、並行して、20年5月にご報告の通り、国際標準化機構(ISO/本部:スイス ジュネーブ)のリスクマネジメントの国際規格を所管する”ISO/TC262”の日本国内WG委員を拝命しています。

ISOは規格作成段階において、その規格の内容や資料について高い守秘性が課せられる他、発行した後も、著作物としてISOは厳格に管理されることになります。そのため、日本でのISO31022を普及させるためには、日本規格協会様のTC262の委員として、貢献を続けることが必要と考えたためです。私自身ISOについて勉強を続けているところであり、日々、委員や事務局の皆様から学んでおります。

(1)と(2)を併せて、日本組織内弁護士協会「リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会」とISO/JSAを架橋して参ります。

(3) 学術的な研究対象としてリーガルリスクマネジメントの先行研究をまとめる

渡部友一郎「リーガルリスクマネジメントの先行研究と新潮流―5×5のリスク分析ツールからISO31022の未来まで」国際商事法務48巻6号(2020)794−798頁

断片化された知識を体系化するためには、学問として、少なくとも実学であるとしても「リーガルリスクマネジメント論」にまで高める必要があると考えました。そこで、6月には国際商事法務にておいて、論考を公表しました。

東京大学大学院法学政治学研究科の先生からご指導を受けつつ、「リーガルリスクマネジメントの先行研究と新潮流」が掲載されました。

おそらく日本の法学研究としては初めて、リーガルリスクマネジメントの国内・海外の先行研究を整理し、今後の実務・研究・議論の理論的基礎として、先行研究の調査の手間を省く役割を担ってくれればと願います。

理想・ゴール

では、これだけ業務の合間を縫って精力的に活動して何がやりたいのか?それは一言でいうと、法学教育から現状欠落している「リーガルリスクマネジメント」という能力を、等しく、若い法律家や法務パーソンに実装してもらいたいという一言に付きます。

体系化されたリーガルリスクマネジメント論を通じて、1年生から代案が提案でき、かつ法解釈とリーガルリスクマネジメントの両方を通じて、事業部をサポートできる人材が生まれたら、日本の国際競争力は格段に向上するでしょう。

また、法務パーソンによって異なる「リスクっぽい」というものに客観的なものさしを貸し出しサポートすることで、業務を透明化し、法務の外部評価を可能にする環境を作りたいという思いです。

筆者作成

究極的にはこの研究成果を広く組織内弁護士や外部弁護士や法務部の皆様、さらに、若いemerging lawyersにお渡ししたいです。

引き続きご指導をどうぞよろしくおねがいします。

まだ42.195kmの5km地点程度ですが、属人化され断片化された「リーガルリスクマネジメント」という法曹のコアスキルを、一般化されたフレームワークとして、誰もが法科大学院や弁護士1年生から座学で最低限はマスターできるような世界を作りたいと思っております。引き続きご指導をどうぞよろしくおねがいします。

ISO31022は、筆者の中では、経済産業省の法務機能在り方研究会の「法務機能の理想像の実装」を実現するための有効なツールであるととらえている。個人の勘や熟練した技に頼るのではなく、体系化され科学的な対象として、リーガルリスクマネジメントを構築していくことが日本の法務のブラックボックス化を解消し、各法律家・法務パーソンの実力をさらにアンロックするものと考えている。(図は筆者作成)

最後に規格説明会のご案内―I am here to help you

法務部・法律家の方に(もしかしたら)自分がお役に立てると思います。

Airbnbで5年+研究で半年以上かけて学んだことを、国内委員長 野口教授とともに、日本規格協会様でシェア致します。8月18日(火)15:00からZoom。

JILA会員の方は6,600円分の値引きございます。 

よろしければお申し込みをお待ちしております。

日本規格協会主催―規格説明会:新しい国際規格(ISO31022:2020)で磨く企業/法律事務所の新リーガルワーク(8月18日火オンライン開催) の申込受付を開始しました

プログラム

時 間講義内容
前半
15:00~16:20
①国内外のリーガルリスクマネジメントの基礎理論
②ISO31022:2020(リーガルリスクマネジメントのガイドライン)の要点解説
③質疑応答
後半
16:30~17:30
①法務・法律家に必要なリスクマネジメントの概説(ISO31000(リスクマネジメント))
②質疑応答
※プログラムは変更になる場合がございます
対 象企業の法務・コンプライアンス・内部統制・総務部門等の担当者
弁護士などの法律家(法律事務所、企業内弁護士)
講 師ISO/TC262国内委員会 委員長
野口 和彦 教授
横浜国立大学 リスク共生社会創造センター センター長

ISO/TC262/作業グループ委員
渡部友一郎 弁護士
日本組織内弁護士協会理事、リーガルリスクマネジメントガイドライン研究会座長

(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

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2020年冬 自習書籍 候補