経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書」(令和報告書)の歩き方ガイド



御礼とSummary

2019年2月のエントリ「委員就任のご報告:経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」(法務機能強化 実装WGメンバー)」でご報告させていただいておりました研究会の報告書(以下「令和報告書」といいます。)が公表されました。

本エントリの目的は、本日公表された5つの資料について、皆様非常にお忙しい中で「令和報告書」をどう歩いてエッセンスを獲得するかという「歩き方」を提供するものです。

まずは「山」の頂きが見える裾野をざっくり歩くハイキングコースもあれば、法務部長やマネジャとして「山」の上までひとまず踏破したいコースもあれば、絶えず法務の在り方を探求しtop-tireの組織内弁護士を目指す若手組織内弁護士として報告書をまるで高山植物を探すように「深く探索したいコース」もあると思います。

注記

なお、以下は私見であり、経済産業省様のご見解でもなければ、他の委員の先生方のご見解でもなく、私が、私なりに、これから読む方をどう助けられるかを考えた私の案にすぎませんのでご留意いただければ幸いです。

経済産業省による本日の発表資料

「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書を取りまとめました-令和時代に必要な法務機能・法務人材とは-」と題するニュースリリースには下記資料が掲載されています(強調部分は筆者)。

経済産業省は、企業経営者が法務機能を十分に活用して、新事業創出等の「事業の創造」を行い、企業価値の向上・増大を図ることを目的として、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~」を取りまとめました。


2018年4月の前回報告書を深掘りし、①法務機能が「事業の創造」にどのように貢献するかを明確化し、効果的かつ具体的に法務機能を組織に実装する方策を示すとともに、②「事業の創造」を担う経営法務人材の育成方法の提言の他、具体的事例を記載しました。

報告書付属資料として、スタッフから経営陣までの職位別の経営法務人材スキルマップ、人材キャリアパスモデル事例集を作成しました。

併せて、周知用資料として「経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針」を作成し、経営陣をはじめとする企業への周知・改革を促します。

「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会報告書を取りまとめました-令和時代に必要な法務機能・法務人材とは-」

まずこの「山」の歩き方は想定読者を正しいとらえることです。ここを間違うと登山口を間違えたものと同じ状況になります。

上記強調部分の通り、そもそも委員の構成段階から、本報告書は、法務が専門の法務部村の私達だけを読み手においておらず、いかにして法務部をEmpowerするために経営者からその信任や信頼(使い方といえるかもしれません)を得るかという課題に挑戦しています。

したがって、本報告書のゴールは「企業経営者が法務機能を十分に活用」していただくことであり、経営者・事業部(クライアント)と法務部門との視点を複眼的にもつことで、より多くを学べる「登山コース」となっております。

令和報告書

「法務機能在り方令和報告書」(下記1&2)、「経営者法務使いこ7(な)指針」(下記3)、「人材スキルマップ」(下記4)、「人材キャリアコンパス」(下記5)資料

  1. 国際競争力強化に向けた 日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~(PDF形式:913KB)
  2. 報告書概要(PDF形式:250KB)
  3. 経営者が法務機能を使いこなすための7つの行動指針(PDF形式:229KB)
  4. 経営法務人材スキルマップ(PDF形式:943KB)
  5. 経営法務人材キャリアコンパス(PDF形式:2,005KB)

この項では、実際に、令和報告書の議論をゼロから追いかける際に、どのような順番で資料を読み解けばよいだろうかという、「山」のあるきかたガイドです。

なお、私のワーキンググループは「実装WG」であったため、まだ100%完全には理解しきれていない「人材WG」の人材に関する「山」については別途日を改めて「歩き方」を考えてみます。

令和報告書〜歩き方ガイド(7指針)〜

毛色が違う「経営者法務使いこ7(な)指針」(上記3)の歩き方

私も本日知りましたが「7指針」という名称がまず好きです。名作ロマンシング・サガ2の「七英雄」(七英雄の名前が都内の地名を後から読んでいることは公知の事実である)然り、無性に指針を覗きたくなる誘惑に駆られるからです。

経済産業省のプレスリリースを詳細に読むと、資料3の「使いこ7(な)指針」については少し毛色が違うことがわかります。

すなわち、7指針は、研究会やWGが検討して議論をベースとして、経済産業省が国として、経営者の方々を名宛人として、指針となる提案をおこなっているProposal Paperといえます。

そうだとすると、資料3と資料1−2&4−5は少し切り離して、経済産業省がどう法務機能のUpdateを経営者の方々に訴えかけようとしているか、という視点で読み込むのが正しい登山の方法といえるかもしれません、多分です。

令和報告書 歩き方ガイド(実装編)〜ハイキングコース

私であれば、「概要」の下記部分が、裾野から「山」を見上げたときの最も重要な部分であると考えます。すなわち、「パートナー機能」「ガーディアン機能」が3つの機能としてさらに分析されている部分です。

自らの法務部門・法務機能を見た時に、己を知る、すなわち、「3つの機能がどの程度期待され、かつ、期待に答えられているか」をまず理解し、その上で、足りないのであればどう実装していくのか(他社の例はどうか?)、という法務機能の「理解への挑戦」と「実装への挑戦」こそが「山」であり、この令和報告書の1つの山頂には「理解と実装をし常に学び前進する法務部・法務人材」が想定されているような気がします。

法務機能をパートナー機能とガーディアン機能とに整理したところであるが、経営陣や事業部門の思い描く事業(価値)の創造を現実化することをサポートする観点から、これをより詳細に分析すると、3つの機能として整理することができる。

まず、パートナー機能は、①クリエーション機能と②ナビゲーション機能の2つにさらに分類することができる。特にクリエーション機能は、事業戦略に関与し「パートナー機能を果たせている」とされてきた先進的な法務部門であっても、現在の環境変化の中で未だ十分には意識が及びにくいと考えられる機能であると思われる。また、残る1つの機能は③ガーディアン機能であり、これは今までと変わらず、あるいはそれ以上に重要かつ基礎的な機能である。

国際競争力強化に向けた 日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書~令和時代に必要な法務機能・法務人材とは~(PDF形式:913KB)

まとめると、時間が限られている方は、報告書のうち、「3つの機能」と「その実装のアイデア」を読まれるのがよろしいかと存じます。

令和報告書 歩き方ガイド(実装編)〜山頂を目指す法務部長・マネジャコース

また稿を改めますが、「3つの法務機能」の実装については、委員の間で見解の相違があったことも私にとっては大きな学びでした。

段階説(渡部)

委員として、私個人は、法務機能には難易度があり、レベル1からレベル3というようなステップアップを念頭に法務機能を考えてはどうかというプレゼンテーションを行いました。事務局の当初案も上記に近かったかもしれません。

平面的相対説

これに対して、私もなるほどなと思ったのが、極論すると、無糖コーヒー(ブラック)のように、そもそも3つの機能のうち「ビジネスクリエイション」(お砂糖)を入れない法務部門もあるんじゃないのか、という指摘でした。

すなわち、自動運転のようにレベル1〜3と段階的に考えるのではなくて、そもそも、3つのうち2つの機能がもっぱら求められており、「ビジネスクリエイション」は機能として(経営者から)期待されていない法務部門もあるから、ピラミッド型に積み上げる図は違和感があるとのご意見でした。これを図にすると上記のように、平面的になり、どの機能が実装されるべきかは相対的に決定されると考えるようになります。

上記議論も、何か結論が変わるわけではありませんが、私個人としては、日本にレベル1−3のレベル3までどのレベルにも精通し、そのニーズに応じて、海外企業の法務部門に対しても、時に「レベル3」の引き出しを開けて対応できる法務人材があまねく会社にいれば、日本の国際競争力(なお、うちは日本の仕事しかしていないという会社も、日本のマーケット内で海外との競争にさらされている点では国際競争力が必要という指摘があった)も向上するのではないかと考えている次第でございます。

今後の研究会に関する情報共有について

最後に、日本組織内弁護士協会(JILA)の次号会報誌では、私の尊敬する弁護士・平泉真理先生(当時:ベーリンガーインゲルハイムジャパン株式会社 執行役員法務部長 ジェネラルカウンセル 、現在:グラクソ・スミスクライン株式会社 執行役員)とともに、「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会2019年の議論」と題された編集部からの取材をお受けした対談形式の記事が掲載される予定でございます。もしもご興味があればご高覧いただければ幸いです。

最後に

経営法務人材キャリアコンパス(PDF形式:2,005KB)

組織内弁護士や法務部員を目指す方向けに、私も経営法務人材キャリアコンパス(PDF形式:2,005KB)に寄稿させていただいております。どうぞご高覧ください。所属する法務部が官僚的・停滞していると感じている若手の方がいらっしゃれば、私個人としては、その解決のヒントは、Enable Functionとして、事業を実現する幸せや喜びがどれだけ「Embrace Adventure」している法務部かというところが鍵なのかなと最近思います。法務は、本来事業をリスクから守り、さらに事業部の夢を毎日実現できるワクワクする職場なはずだと思っており、そうした環境を整備した法務部門は、優秀な成長意欲ある人材を惹きつけられるのではないかとも個人的には思う次第ですが、いずれも研究もデータもない所感でございます。


(了)

※記事に関しては個人の見解であり、所属する組織・団体の見解でありません。なお、誤植、ご意見やご質問などがございましたらお知らせいただければ幸甚です(メールフォーム)。

記事をご覧いただきありがとうございます、次回アクセスのご案内です:「若手組織内弁護士」でご検索ください。「inhouselaw.org」のURL直打ち も便利でございます。

2020年冬 自習書籍 候補

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