法務エレベーターピッチ「ビッグデータと独占禁止法」

*このコーナー(投稿)は、将来、論文・プレゼンテーション・会議・報告書・国内外の上司・同僚との会話に利用できそうな有意義な定義・データ・リンクを短くまとめたものです*



他社の同期若手インハウス「年始に公正取引委員会の杉本委員長のインタビューが日経に出ていましたね。『ビッグデータと独占禁止法』についてなにか良いとかっかりはありませんか?」

杉本公正取引委員会委員長のインタビュー

2019年1月6日の日本経済新聞に杉本委員長のインタビューが掲載されています。競争当局の考え方を端的に示すものとして非常に重要です。以下、重要な部分をボールドにして引用します。

――プラットフォームビジネスのあり方が問われています。


「(略)プラットフォームビジネスは独占的な地位になりやすい面もある。目先の便利さだけにとらわれず、デジタル経済における競争的イノベーションが継続的に起きるような環境をつくる必要がある


――そのために政策で必要なことは何ですか。


「(略)プラットフォーム企業による市場支配やデータ独占といった行為への目配りがより重要だ。独占禁止法の執行だけでなく、他分野の政策に競争政策を融合させる流れが国際的に強まる可能性がある(略)」


――公取委もデータの囲い込みに厳しい姿勢を取ろうとしています。


「データを不当に囲い込んだり収集したりすればプラットフォームを利用している企業や個人に不利益を与えることになる(略)」

優越的地位の乱用に対する規制が有効なツールになる(略)」

「この規制はこれまで大企業と中小企業の取引に使われてきた。だが今は個人も自らのデータを対価として支払い、市場を形づくる要素となっている。そうであるならデータを巡る個人とプラットフォーマーとの関係にも優越的地位の乱用規制は適用できる(略)」


――データそのものには価値がないという考え方もあります。

我々はデータ自体に価値があると思っている。

無料サービスを使うための対価や、革新的なサービスや製品を生み出すための材料の側面がある。電力網や携帯電話の通信網などと同じく、データも新規参入企業にとって『不可欠な施設』と捉えることも可能だ」

――「企業対個人」の問題すべてを競争政策でカバーできますか。


「データの所有権とも絡む問題だ。例えば個人情報は法律で強く保護されており、収集にも労力がかかるため、収集方法が不適切だと競争環境を左右する。だが、強く保護されていないデータには同じことは言えないかもしれない。競争政策の出番があるかどうかは、個人が提供するデータの性質にもよるだろう」

競争政策、国際協調カギ データ独占に対応 公取委・杉本委員長に聞く 2019/1/6付 日本経済新聞 朝刊

杉本委員長のインタビューでの示唆

ここではいくつかの重要なご示唆があります。

  1. データの不当な「囲い込み」や「収集」はプラットフォームの利用者に不利益と考えている。利用者には「企業」のみならず「個人」も含む。
  2. 優越的地位の濫用が独禁法上のツールとして使えると考えている。
  3. なぜなら、「個人も自らのデータを対価として支払い、市場を形づくる要素」であるから。
  4. 「データ(そのもの)を対価」として捉える。言い換えれば、「無料サービスを使うための対価や、革新的なサービスや製品を生み出すための材料の側面」を有するからである。データが無価値という見解に反対。「材料」として有価値なのである。
  5. 強く法律上保護されているデータについては「収集にも労力がかかるため、収集方法が不適切だと競争環境を左右する」。

伊藤先生(EY法律事務所)の「ビッグデータと独禁法」のニュースレターが有益

ここで、ベンチャーやインターネットサービスにも造詣が深い弁護士 伊藤先生が「データの価値」に言及している部分がありましたので、ご紹介します。

データ自体は比較的簡単かつ安価に入手できるようになってきている

データそのものに大きな価値はなく、分析及び予測アルゴリズムとの組み合わせで初めて価値が生まれる

伊藤多嘉彦「Digital Law ビッグデータと独禁法」情報センサー2018年新年号伊藤多嘉彦「Digital Law ビッグデータと独禁法」情報センサー2018年新年号

伊藤先生のこのニュースレターは、「3. 独禁法の適用に当たって考慮すべき点」も踏まえて、非常にわかりやすくインターネットサービスにも造詣が深い実務家からの視点が解説されておりますので、どうぞ御覧ください。

深掘り資料


(了)

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